この記事のポイント

  • スプライトでアルコールの分解酵素の活性が上がった
  • in vitroの実験のため、実際に飲んで効果がある可能性はかなり低い
  • 二日酔いの防止に効果がある飲み物として期待できなくはない

2014年に「二日酔いにはスプライトが効く」という論文が発表されたと、一部のニュースサイトで取り上げられました。

これを見て、「本当・・・?どんな実験してんの?」と疑問に思い、いくつかのサイトを確認しました。「効果がある!」と言い切っているサイトや「効果があるかもしれない」と少しぼかしたサイトばかりで、科学的な批判がされているサイトはありませんでした。

そのため、どうせなら自分で読んで、科学的な批判をしてみようということで、今回はこの論文を取り上げます。

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今回取り上げる論文は、「スプライトが二日酔いに効くか」というものです。絶対効かないとは言い切れませんが、今回の実験だけで二日酔いに効果があるとは言えないですが、可能性はあります。
Effects of herbal infusions, tea and carbonated beverages on alcohol dehydrogenase and aldehyde dehydrogenase activity
Sha Li, Li-Qin Gan, Shu-Ke Li, Jie-Cong Zheng, Dong-Ping Xu, Hua-Bin Li*
(Sun Yat-Sen University)
Food & Function, 2014, 5, 42-49.

背景:お酒に対して強くなる方法は?

お酒(アルコール)は世界中で飲まれています。

この記事を読んでいる方も毎日、あるいは週1,2回の頻度で飲んでいるかもしれません。これまでの研究で、お酒を定期的に適度な量だけ飲んでいる人は、飲んでいない人に比べて、血管障害、糖尿病、認知症のリスクが少なく、死亡率も低いことがわかっています。さらに、女性では体重増加のリスクが低くなることもわかっています。(適度な量を飲んだ場合です)

アルコールを飲むと、そのときは酔っ払って気持ちがよくなりますが、飲みすぎると、次の日の朝に二日酔いになりますよね。二日酔いの原因がアセトアルデヒドと呼ばれる物質で、アルコールの代謝で生じます。

この代謝の過程を見ていきましょう。

体内でADHが働き、アルコールはアセトアルデヒドに酸化され、次にALDHによって酢酸に酸化されます。酢酸まで酸化されることによって無毒化されます。アルコール代謝酵素のADHやALDHの働きは、様々な要因(食べ物、遺伝、薬など)によって強まったり、弱まったりすることがわかっています。
ADHとALDHによるアルコールの代謝

豆知識
ちなみに、ADH、ALDHは酵素と呼ばれるもので、体内の化学反応を円滑に進行させる物質です。人によって、この活性が高かったり、低かったりするので、お酒の強さに個人差があります。
  • ADH : Alcohol dehydrogenase
  • ALDH : Aldehyde dehydrogenase

日本語ではそれぞれアルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素といいます。dehyderogenaseはde-hydrogen-aseをつなげた言葉で

  • de:脱(離)
  • hydrogen:水素
  • ase:酵素

の意味です。

NAD+の構造式また、NADHは補酵素で、文字通り、酵素の働きを補うものです。右のような構造をしています。窒素原子(N)を含む六角形の部分がピリジン骨格と呼ばれる骨格で、そこの水素原子が分子間で移動することで、他の化学物質の酸化・還元を行っています。

こういった代謝酵素の活性が食べ物で変化するなら、飲み物でも変化するのではないかと著者らは考え、今回の実験を行いました。世界中でよく飲まれているハーブティーや炭酸水を調べ、ADHやALDHの働きを強めたり弱めたりする飲み物がわかれば、急性or慢性アルコール中毒を減らせる可能性があります。理論上の話ですけどね。

手順:代謝酵素と飲み物を混ぜる!!

試薬会社からADH、ALDH、NAD+、エタノール、アセトアルデヒド、緩衝溶液を購入しました。
ADHの活性試験:pH8.8の緩衝溶液にADH、エタノール、サンプル(飲み物)、NAD+を混ぜました。混ぜた直後と15分後に(光の波長340nmでの)吸光度を測定。
ALDHの活性試験:pH9.5の緩衝溶液にALDH、アセトアルデヒド、サンプル(飲み物)、NAD+を混ぜました。混ぜた直後と15分後に(光の波長340nmでの)吸光度を測定。

吸光度測定とは・・・液体中のNAD+の量を求めるための測定。ランベルト・ベールの法則を利用して、測定した吸光度から溶液中のNAD+の量を計算します。代謝時にNAD+が消費されるため、混ぜた直後と15分後のNAD+の量を求めることで、サンプルによってADH・ALDHの活性がどのくらい変化したかを調べています。(リンク先はどちらもwikipedia)

結果:スプライトがADH、ALDHの活性を上げた

居酒屋でお酒を飲んでいる女性

二日酔いにはスプライトが一番効く、らしい。。。

実験結果としては、スプライトがADHとALDH両方の働きを強めるという結果が出ました。
つまり、エタノールからアセトアルデヒドを経由して酢酸に酸化されていく代謝が速くなるということです。

57種類の飲み物で調べられていて、ADH・ALDH両方の活性を下げるもの、どちらかを下げるものもありますが、両方の活性を上げるものはわずか4種類でした。その中で、スプライトが一番効果があったという結果です。

そのため、アルコールと一緒にスプライトを飲めば、アルコール中毒による社会問題や健康問題を軽くできるかも・・・という話です。

ただ、この実験は臨床学的な実験ではなく、あくまでも化学的な実験です。細かい実験手順は上で書きましたが、被験者が飲んだ結果を見たのではなく、試薬として販売されているADHやALDHにスプライトを混ぜた結果です。(こういった実験をin vitroでの実験といいます)

なので、飲んだときにも同じ効果があるかはわかりません

というより、おそらく同じ効果はないでしょうね。スプライトに含まれるどの成分が効いているかはわかりませんが、その成分が肝臓まで吸収されないと、ADHやALDHに働きかけができないですし。

もしかしたら、飲むだけでも多少は効くかもしれませんが、ほぼ確実に、今回の実験結果よりは弱まりますね。

そもそもADHやALDHに直接働きかけて、活性が強まったのかもわかりませんね。代謝に使われるNAD+の方に作用している可能性もありますし。

結論:二日酔いが改善されるかも・・・

二日酔いで潰れている男性

二日酔いにはスプライトが効く・・・かもしれません

効果があるかもしれない飲み物をスクリーニングするという意味での実験としてはいいですが、混ぜただけの実験で、人が飲んでも「効果がある」とは言えないですよね。

あと、論文を読んでいて思ったのが、この論文の文章が適当すぎます・・・。abstractとconclusionに全く同じ文章が書いてあって、conclusionは全然具体的でなくて、読んでも結果がわからん!

雑誌のエディターやこの論文のレビュアーはちゃんと仕事してくださいヽ(`Д´)ノプンプン

こういう適当な文章が書いてあると、実験の中身とは無関係とわかってはいても、「この実験、大丈夫かな?本当にちゃんと実験したのかな?」と思ってしまいます。。。

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