この記事のポイント

  • テストを使った効率的な勉強法が判明
  • 時間対効果がもっとも高い方法は、テストをしてミスした問題だけ復習し、テストは正解した問題を含め、全て解き直すという方法
  • この方法で勉強すると、1週間後の最終テストでも、勉強した内容が長期記憶に残っていて、点数がよくなった

効率的に勉強したいというのは誰もが一度は考えたことがあると思います。その願いを叶えるべく、今回はテストを使って効率的に覚える方法に関係する論文を紹介します。

受験勉強や資格試験の勉強をしていく中では、練習問題や過去問を解きますよね。
当たり前ですが、一部は正解するものの、不正解もいくらかあるという結果になると思います。(全問正解しかしない人は、この記事を読まなくて大丈夫です)

この後、みなさんはどうやって勉強しますか?

とりあえず、全部の問題を復習しますか?それとも間違えた問題だけ?
復習が終わった後、問題は全部解き直しますか?それとも間違えた問題だけにしますか?

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人それぞれやり方は違うと思いますが、今回の論文で、テストを使った復習のやり方の最適解が報告されました。

 

ちなみに、今回紹介する論文はScience誌のものです。論文が掲載されている雑誌だけで評価が決まるわけではありませんが、Scienceという雑誌は科学界では超一流の雑誌です。

Scienceに論文が掲載されるということは、スポーツで言えばオリンピックに出場、経済で言えばニューヨーク証券取引所に上場するようなものです。

研究者の中では、一生のうちに一回でもScienceに論文が掲載されれば大成功と言われるくらいです。掲載されれば、求人は引く手あまたで、大きな賞の受賞も狙え、研究費も獲得しやすくなります。まさに人生が変わります。

The Critical Importance of Retrieval for Learning

Jeffrey D. Karpicke (Purdue University)
Henry L. Roediger III (Washington University)
Science, 2008, 319, 966-968.

背景:勉強やテストの受け方で成績が変わる?

エビングハウスの忘却曲線

記憶の定着率に関する実験では「エビングハウスの忘却曲線」がもっとも有名です。忘却曲線の結果を受け、これまでの心理学の研究では、繰り返し勉強したり、短期間で集中して勉強したりすることが長期記憶には良いことであると考えられてきました。(2019年現在、長期記憶には短期間で集中する方法は効率的ではないことがわかっていますが、この論文が書かれた2008年当時はそのように考えられていました)

2000年以降の研究で、テストを受けることは、覚えているかどうかという確認以外に、記憶の定着という観点からも有効であることが判明してきました。

しかし、テストを受けて、具体的にどうやって記憶を定着させればいいでしょうか?「テストを受ける」と一言で言っても、どの問題を解くか、どのくらいの時間をかけて解くか、どの程度解くかといったことが明確ではありません。

また、記憶が定着しているかどうかということは自分自身でわかるものなのでしょうか?すなわち、自分が覚えている分量を正しく自己評価できているのでしょうか?

これらの疑問を解決するために、今回の実験が行われました。

手順:単語テストで正解した問題を除いていく

筆記試験を受けている人

被験者:ワシントン大学の学生40人。
スワヒリ語ー英語の単語の意味を答える勉強とテスト(40問)を行いました。(勉強4回、テスト4回)

被験者はアメリカ人なので、彼らの外国語(スワヒリ語)を母国語(英語)で答えます。英単語を見て、日本語で意味を答える勉強・テストと考えてもらえばわかりやすいです。

大まかな実験の流れは、次のとおりです。
勉強(1)テスト(1)勉強(2)テスト(2)勉強(3)テスト(3)勉強(4)テスト(4)(1週間)最終テスト

  1. 勉強は、パソコンの画面にスワヒリ語と英語がペアで5秒間表示され、それを覚えるというやり方です。次々と単語のペアが表示され、被験者は40ペアを覚えました。
  2. この方法で勉強した後、30秒間、掛け算の問題を解きました。これは勉強した内容から意識をそらすためです。
  3. テストでは、スワヒリ語の単語が画面に表示されるので、その単語に対応する意味の英単語をタイピングしました(解答時間は8秒、最終テストでは15秒)試験中、正解かどうかは知らされません。

被験者はA~Dの4グループに分けられます。最初は全てのグループで、40組の単語を勉強し、テストをしました。その後から勉強とテストのやり方がテーブルのように違います

グループ

復習

テスト

  

A

全て

全て

B

ミスした問題だけ

全て

C

全て

ミスした問題だけ

D

ミスした問題だけ

ミスした問題だけ

勉強とテストがそれぞれ4回終了した後、被験者に「1週間後に最終テストしたら、どのくらいの点数がとれそうですか?」と質問し、実際に1週間後に最終テストをして、実験は終わりです。

上のようなグループ分けを見ると、覚えていない単語だけを勉強してテストを受けたDグループが一番、時間効率が良さそうに見えます。さて、結果はどうでしょうか??

結果:テストは全ての問題を受け直す!!

4回のテストの成績だけを比べると、どの勉強法でも同じ

時間効率はとりあえず置いておいて、40個の単語をきちんと覚えられたかという成績だけをグループごとに比較すると、どのグループも1,2,3,4回目のテストで、ほとんど同じ数だけ単語を覚えていました。

つまり、時間効率を無視すれば、どの勉強法でも短期記憶の成果は大して変わらないという結果。

また、試験後の質問(1週間後の最終テストでの成績予想)の答えも、どのグループも40問中、20-22問(50-55%)という結果になりました。

覚えているかどうかという自己評価も、今回グループ分けした勉強法の違いでは、差はないということでした。

ここまでだと、一番時間が短いはずのDグループがもっとも効率的な感じがします。しかし、最終テストで長期記憶を確かめると、4つのグループで差が出てきました!!

1週間後の最終テストの成績で明暗が別れた

記憶が蓄えられるクラウド

学習では、勉強したことが長期記憶に入ったかどうかが重要なので、今回の実験でも1週間後の最終テストでの成績を比較しました。
この結果で、勉強法ごとに明暗がはっきり別れました!!

結果がこちら

グループ

1週間前の予想

正答率

  

A

52%

約80%

B

51%

約80%

C

55%

36%

D

51%

33%

初日の実験後の予想(4つのグループで正答率50-55%)に反して、グループごとに大きな差が出てしまいました!!
A
BグループとCDグループでほぼダブルスコアの差が見られました!

時間効率を考えると、グループABでは、どう考えてもBの方が時間は短いです。Aグループはすべての問題を復習するのに対し、Bグループは間違えた問題だけ復習するのですから。

それでも最終テストの成績が同じということは、正解した問題を見直す必要はない、ということです。(グループCDの比較でも同じことが言えます)

しかし、ABグループとCDグループのスコアで大きな差が生じたということは、テストを受けるときは間違えた問題だけでなく、すべての問題を解きなおす方法がベストということです。

テスト効果によって差がついた

テストを受けている少女

時間効率を考えると間違えた問題だけに絞った方がいいですが、テストですべての問題を受け直した方がいいというのは、テスト効果と呼ばれる効果が関係しているのでしょう。

思い出す訓練をしたほうが長期記憶に残りやすいことをテスト効果と言います。テストを受ける(問題を解く)ということは何かを思い出させることになっているので、自分で覚えようと思って、繰り返し教科書を読むより、圧倒的に記憶には定着しやすくなります。

A・Bグループはすべての問題を4回思い出したことで40個の単語が記憶に定着したのに対し、C・Dグループは正解した単語はテストから外されるので、1回しか思い出していないことになります。

この差が最終テストでダブルスコアの差を生み出すことになったのではないかと思います。

結論:見直しは最低限でOK

今回の実験結果から、知識を長期記憶に入れるには、「繰り返し思い出す」ことが大事ということですね。

テスト形式で問題に答えることで、強制的に思い出すことができるようになります。グループA vs CまたはB vs Dで比べると、同じ勉強の仕方であっても、テストで問われる範囲が違うだけで、最終テストで大きな差になります。

要は、
勉強間違えた問題だけ復習
テスト全部
ということです。

覚えているものを見直ししても時間の無駄ってことですね。見直すより、問題を解き直すべき、ということです。

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