パソコン、タブレット、スマホが普及してきたことで、ノートにメモをするということが減ってきています。みなさん、メモをするときはスマホのメモ帳アプリに書いたり、自分宛てのメールを書いたり、Wordに書いたり、とデジタルデバイスを利用することがほとんどになってきています。

それを理由に漢字を思い出せないことが増えてきているということは少し前によく言われていました。僕も字を書いているときに、漢字が思い出せないというのは、ちょくちょくありますが、みなさんはありませんか?

ちなみにこの論文のタイトルは、イギリスの作家のエドワード・ブルワー=リットンの言葉「ペンは剣より強し (Pen is mightier than the sword)」をもじったものです。この記事のタイトルもそこからもじっています。

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今回は、話を聞きながらメモを取るとき、手書きとキーボードではどちらが話の内容を理解しているか?という実験を紹介します!

The Pen Is Mightier Than the Keyboard: Advantages of Longhand Over Laptop Note Taking

Pam A. Muller (Princeton University)
Daniel M. Oppenheimer (University of California)
Psychological Science, 2014, 25(6), 1159-1168.

この論文の要旨

メモする方法には、手で紙に書く方法とパソコンに打ち込む方法があります。パソコンが普及する前は手書きが主流でしたが、普及とともにパソコンでメモする人が増えました。パソコンでのメモは利便性の面では優れていますが、記憶という観点からも優れた方法と言えるのでしょうか。

この論文では、RCTで、手書きとパソコンで、どちらのメモの方法が記憶の面から優れているのか調べました。メモする対象は、講義のように人の話を聞きながらメモして、内容を覚えられるか試験しました。

その結果、メモの方法による記憶力の優劣は、復習するかどうかによって変わることが明らかになりました。

復習しない場合は手書きでメモしたほうが記憶に残りやすいという結果になりました。一方、復習する場合は手書きもパソコンもどちらでも記憶に残った割合は変わりませんでした。

背景:パソコンでのメモは記憶するために有効?

キーボードを打つ人

(おそらくアメリカでは)講義や授業中、パソコンでメモする学生が増えてきています。

これについて、教授と学生の間で意見が食い違っているそうです。
教授側:パソコンだと気が散ってしまい、ディスカッションや学ぶ機会が減る
学生側:パソコンを使うのは便利であり、仮に気が散ったとしてもコスパが良い

こういった意見の違いもあり、過去にも色々な研究がされてきていました。講義をパソコンでメモしながら聞いたグループとノートに手書きでメモを取りながら聞いたグループで、講義の内容を理解しているかテストするという実験でした。

文章で書くと、これらの実験で十分そうですが、実際は、講義を受けた直後だけにテストを受けていて、さらにテストも表面的な知識を問うだけだったそうです。

そこで、著者らはパソコンと手書きメモのどちらが、講義内容をより深く理解しているかを調べる実験を行いました。

手順:TEDを見て、内容に関するテストを行った

スピーチする男性の肖像画

3種類の実験を行っています。Study1の結果を受け、Study2を行っています。

Study1

参加者:プリンストン大学の学生で男性33人、女性33人、不明1人。(不明って何!?不明が何のことを示しているのかはわかりません)
ただし、2人が途中で除外されました。

被験者は2つのグループ、手書きでメモするグループとパソコンでメモするグループに分けられました。

手順
①被験者はTEDの映像(15分強の長さで一般教養として知られていない内容のもの)を見ました。このとき、被験者は映像の内容を手書きかパソコンでメモします。(パソコンの被験者はキーボードでメモします。スマホのフリック入力ではありません)
②別室に連れて行かれ、数種類のテストを受けました。TEDの映像とは関係ないテストで、これは被験者の注意を逸らすためにテストをしました。②だけで約30分経過するようにしています。
TEDの映像に関して、表面的な知識を問うテスト内容を理解しているかを問うテストを行いました。
④論文著者および実験内容を知らない評価者の2人(著者も評価者も被験者のメモの方法を知らない)が、テストを採点し、スコアを出しました。

Study2

参加者:カリフォルニア大学の学生で男性35人、女性116人。

手順
Study1
と同様のテストを行いました。
ただし、パソコンでメモする一部の人に、話者が喋った言葉ではなく自分の言葉でメモするようにと伝えられました。というのも、Study1のときに話し手の言葉をそのまま書く人が多かったためです。

つまり、被験者は3つのグループ、手書きでメモするグループ・パソコンでメモするグループ・パソコンでメモするが上の注意を伝えられたグループに分けられました。

Study3

参加者:カリフォルニア大学の学生で男性27人、女性82人。

被験者は2つのグループ、手書きでメモするグループとパソコンでメモするグループに分けられました。

手順
①被験者はテレプロンプター(文章が順番に出てくる映写機。映画の終わりで出演者などのクレジットが流れるようなものをイメージしてください)で、コウモリ、パン、ワクチン、呼吸の4テーマに関するメッセージを読み続けます。それぞれ約7分間の映像を視聴しました。その翌週、内容に関するテストを受けました。

②一部の被験者は10分間復習した後、残りの被験者は復習せずに、映像の内容に関するテストを行いました。各テーマについて10問ずつ、合計40問のテストです。

③論文著者および実験内容を知らない評価者の2人(どちらも被験者のメモの方法を知らない)が、テストを採点し、スコアを出しました。

結果:手書きかパソコンかよりもっと大事なこと

会議の内容をメモする女性

ペンで手書きしたほうが理解力が上がった!?

表面的な知識を問うテスト(例:インダス文明は約何年前にありましたか?)では、パソコンでメモしたグループと手書きでメモしたグループでスコアに差はありませんでした。

しかし、内容の理解を問うテスト(例:日本とスウェーデンの社会では、平等に対するアプローチがどのように違いますか?)では、手書きのグループの方がスコアが高くなりました

表面的な知識を問うテストは、学校のテストでいうと基礎問題で、点数を稼ぎやすい問題。内容の理解を問うテストは、応用問題で、期末テストの最後に出てくる問題といったイメージです。

また、Study1で、パソコンでメモしたグループの方が、手書きのグループに比べて、スピーカーの言葉をそのままメモする割合が高かったとのこと。パソコンでメモしたグループと手書きでメモしたグループそれぞれで、被験者の14.6%8.8%が話者の言葉のまま写しました。

この結果から、著者らは「スピーカーの言葉をそのままメモせず、自分の言葉で書いた方が理解するようになるのでは?」と考え、Study2で、パソコンでメモするがスピーカーの言葉をそのままメモしないように注意をしたグループを作りました。

しかし、Study2で3グループの成績を比較しても、手書きのグループが一番内容を理解していました。

結局、手書きが良いってこと?

Study1,2で講義後に復習する時間を設けた場合、パソコンでメモしたグループの方がテストのスコアがよくなったそうです。スピーカーの言葉をそのままメモしているから、ですかね。ただ、1週間後に再テストをした場合は、パソコンの方がスコアは悪くなりました。

結論:復習が一番大事

フィードバックする白い人

結論としては、メモの方法は復習するかしないかにかかっているようです。
復習するどちらでもOK!講義の内容をたくさんメモできるという点ではパソコンの方がいいかもしれません。
復習しない手書きメモ一択!!

著者らの結論も、手書きでメモしたグループの方が話を考えながら聞いていたから成績が良かったのではないか、というものでした。

結局、どうやってメモをしようかと考えるより、復習するかどうかが重要なようですね。

今日も最後まで読んで頂きましてありがとうございました!



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